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<その25>
(688) 黒猫の仕事その2


(688) 黒猫の仕事その2

アルフレッド-
女将さん、またまたご無沙汰が長いです。

女将―
前回も言ったでしょ、伊那谷のヒサコさんに約束したレポート書くのに必死だって。(※1)
関連資料を見ていくと、ああ、そうだったのか、と思うモノに出遭ったりして、興味は広がる一方なのに、それを整理吸収する脳力・エネルギーが乏しくって…
ようやっと、下書きにこぎつけた。
それを見てくれたヒサコさんの気持にどう応えるか、悩んでる。

アルフレッド-
書いたものを即公開はしないんですね。

女将―
そりゃそうよ、誰だって、リアルで寛いでおしゃべりしたことが文字にされてたらビックリする。録音もしてなかったのに、って。
私自身、インタビューされる側になれば、文字にされたくないこと、ってあるし。

三太―
おかあ、悟りにゃまだまだ遠い。
集めた資料をひっくり返してたら、『クロネコ』に遇った。(※2)
推定、百歳を超える、ナマ猫だったらとうに化け猫。
食事処の看板猫だ。13年前には蕎麦・うどん・丼物なんかの店。
昭和の一時期には、カフェーだったんだと。
カフェーというのは、
いまどきは女性客が好むおしゃれな喫茶・軽食店ってイメージだけど、
昭和2(1927)年に東京・銀座に『カフェ・クロネコ』が開店した頃は白エプロン姿の女給がいる店、だったみたいだ。

※1 (687) 黒猫の不在 第921号 2024.4.9
※2 『保存版 昭和写真大全 上伊那』 郷土出版社2011年、p3
「クロネコ(伊那市) 創業は大正期にさかのぼる。昭和の一時期には、カフェとして営業していた。
現在は食事処として営業しており、そば、うどん、丼ものなどを楽しむことができる。建物は創業当時のままである。」


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(687) 黒猫の不在 

アルフレッド-
女将さん、毎日、何しているんです?

女将―
伊那谷のヒサコさん(※1)に約束したレポート書くのに必死。
い~っぱい聞かせてもらったお話を、どう整理したらいいか、まとまらなくて…
ようやっと、昨日、一部分の下書きまでこぎつけた。
載せる地図を見つけるのもたいへん。

アルフレッド-
女将さんは報告には、必ず地図を載せます。
読む人のためですね。

三太―
いや、おかあ自身のためだろ。
調査地を示すのに、「北緯何度、東経何度…」って書いてもピンとこないもんだから、地図を載せるんだ。
<自分のために>やったことが、<他者のためにも>なれば幸い、ってのがおかあの生き方だから。

アルフレッド-
女将さんが、メールを見ながら、ブツブツ言ってます。

女将―
私は、ちっともナマ猫に会えない(※2)のに、
おとうは、行く先々で黒猫に出会ったって、写真送ってくる。
なんで、おとうばっかり……

※1 (684)天竜川 
※2 (686)黒猫の仕事 



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(686) 黒猫の仕事 

三太―
おかあ、図書館のジロちゃんに「返却期限が過ぎてます」って言われて借りてた本をかき集めて出て行った。
カラ身で帰るのはもったいない、ってこども室の棚にあった2冊を引き抜いて借りて図書館を出た。

おかあ―
お天気がいいので、久しぶりに若葉の森の坂道を登って、台地の上に出た。
歩き始めて、ふと、黒猫に逢うかも、って感じて、公民館までまっすぐの道を眺めたら、宅配便の白いクルマがこっちへやってきた。
道端によけて見てたら、白い車体のすみっこに、黒猫マークが付いていた。

『ブックキャット ネコのないしょの仕事!』アルフレッド―
やあ、『ブックキャット ネコのないしょの仕事!』(※1)ですか、ロンドンの黒猫モーガン、なつかしいです。
ミュージカル『キャッツ』の原作、世界的有名猫です。

おかあ(=女将)―
ブックキャットっていうから、本屋さんの飼い猫かと思ったら、出版社の門番ネコなんですって。
そのうえに、≪ないしょの仕事≫って何だろう?
1940年9月、第二次世界大戦がはじまって最初のロンドン空襲の夜に生まれたモーガンが、
1944年、空襲下だからこそ思いついた仕事だった。
もう一冊は『麦畑になれなかった屋根たち』(※2)、これは1944年の日本の空襲の本。
たまたま、同じ戦争の空襲・疎開・終戦を描いてる本を借りたんで、イギリスと日本との違いをしみじみ感じた。

※1 『ブックキャット ネコのないしょの仕事!』
    ポリー・フェイバー作、クララ・ヴリアミー絵、長友恵子訳、徳間書店、2023.3.31 
※2 『麦畑になれなかった屋根たち』 藤田のぼる文、永島慎二絵、童心社、1995


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(685) 一条龍

アルフレッド―
女将さん、何、検索してるんです?

女将(=おかあ)―
今朝、テレビで「一条龍」ってことばを見た(※1)、何だろうと思って…

アルフレッド―
日本では 2011年に登場した漫画の主人公、天才サッカー少年の名前です。
中国語の「現在では、大企業の流れ作業による生産ラインを「一条龙」生産ライン、と呼ぶ。」という回答もありますね。
今日のテレビのテーマは、「白タク容疑の中国籍男性を逮捕」でしたが、そのなかで、「一条龍」という言葉が出てきました。
中国からの観光客が増えても、旅行のパッケージ~空港から観光地までのタクシー「白タク」~土産まで、すべて一貫して中国でセットされていて、
日本にはお金が落ちない、という仕組みを「一条龍」と言っていたようです。

三太―
おとうが、こんなメールが来たって、転送してきた。
「まさか騙される人はいないと思いたいけれど、気持ち悪いこと甚だしい。
   発信者:警察庁
   件名: 警察庁について
   警察庁について 私たちは警視庁です。
   あなたのお子様は窃盗容疑で逮捕され、被害者に230万円の賠償金を支払う必要があります。
   至急下記口座にお振込下さい。(下略)」

おかあ―
私にも先週来ました。
でも、完全に同文ではない、「おとう」さんのお子様は230万円だけど、私のお子様は90万円です。
親の支払い能力も、ちゃんとジェンダー格差を見込んで算出しているようです。日本語能力は怪しいけど。

三太―
おかあ、PC画面から目をあげて、リビングの窓のレースカーテンが閉まっているか、確かめた。
気持ち悪いのはネット空間だけじゃない。
リアルで、「24時間巡回」が室内の行動まで覗いてチャットする、それが個人の「覗き趣味」というのでなく、業務として共有している、
という恐ろしい人権侵害がまかり通っているからだ。(※2)

※1玉川徹氏 白タク疑いで中国籍の男逮捕に「ライドシェア…裏にどういう意図、思いが当局にあるのか」(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
※2 ☆2.外環、陥没その後[第919号 2024.3.13「むらき数子 情報ファイル」
   ☆2-1.陥没以後の24時間巡回で、地域住民全体を「監視」「盗聴」



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(684) 天竜川

アルフレッド―
女将さん、メールの受信トレイがいっぱいです。
図書館のジロちゃんからも連日来てます。

女将(=おかあ)―
分かった、分かった、ジロちゃんに会ってきます。

三太―
図書館から帰ってきたおかあ、借りてきた本を「図書館の本の棚」に並べた。
た~くさん過ぎて、棚からあふれてる。

おかあ―
予約本を、先週申し込んだ本だけでなく、半年前に申し込んで何十番も待っていた本まで、いちどきに貸し出してくれたから。
<いつも、限度いっぱい予約しておく>というのは、コロナ禍で学んだ知恵(※1)。

アルフレッド―
前号からだいぶご無沙汰してる間、何してたんですか?

女将―
伊那谷へ行ってきた。その準備から後片付けまでアタマいっぱいだった。
去年の「恒例・夏の家出」(※2)の再訪。
いわば、「冬の家出」、冬にふさわしく、雪と晴れとが日替わりだった。
ホテルの窓から眺めて見て、伊那谷は、天竜川が暴れて作ったんだって、納得した。
ヒサコさんが、一日、クルマで連れ回ってくれて、いっぱいいっぱいお話聞かせてくれた。
リタイアしてからも、春から秋までは畑、冬は本読んだり友達と旅行したり押し絵を作ったり、おつきあいも多いし、
とにかく忙しいんですって。
作品のアルバムを見せてもらったら、龍がいた。

アルフレッド―
【天竜川の龍】ですね。


※1 (558)アルフレッド・図書館再開 
※2 (667)九百人のおばあさん


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(683) ガザからの龍

アルフレッド―
ガザから龍が来ました。
アラビア文字のカリグラフィーです。
パレスチナ子どものキャンペーン」の通信『サラーム平和』(※1)を紹介します。

「パレスチナ子どものキャンペーン」は、毎年、年賀状を作成してきましたが、
この冬は皆様へのご挨拶も年賀状の販売も控えさせていただきました。
デザインしたのはイブラヒム・ムフタデイさん、家と職場、自身のアトリエを失っています。

イブラヒムさんのメッセージ
「私は妻と子ども3人、両親とともに安全な場所を探して、あちこち移動しています。
ありがたいことに生き延びていますが、未来がどうなるのかはわかりません。
まずは「今」を心配しないとなりません。明日、安全で一緒にいられるかはわからないのですから。
失ったものは大きく痛みを伴います。
しかし、私たちは灰と瓦礫の下から再び立ち上がるでしょう。どんな困難があろうともアトリエを再建し、夢を再び取り戻したいと思っています。
私たちにはまだ「希望」があり、それがこの土地でこのような状況下で生き延びるための唯一の手段なのです。
世界中の自由な人々には、私たちを支援し、私たちのために、この不正義に反対する声を上げ、立ち上がるようお願いします。
私たちには普通の生活を送る権利、生きる権利があります。」

※1 『サラーム平和』2024年1月25日発行№128 特定非営利活動法人パレスチナ子どものキャンペーン


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(682) 辰年生まれ

アルフレッド―
今年、女将さんがいただいた年賀状には、名前に「龍」「辰」の字のついた人が何人もいたようですね。

女将-
そうね、生まれた年の干支を名前に付ければ、周囲も本人も、一生涯、死んだあとでも、「何年生まれだ」か一目瞭然。
いま、活躍中の国会議員「川田龍平」さんがその一人、1976年の辰年生まれ。
彼のシンボルマークは、西洋系ドラゴンの中で私の一押し。(→図)

テラのおかーさん―
エルマーの冒険のドラゴン、最高にカワイイ!(※1)
エルマーの「ボリス」に1票!(笑)


アルフレッド―
ま、興奮しないで。どっちも、ということで。
で、「龍」「辰」のついた名前の人は、みんな辰年生まれ、ということですね。

女将-

そうだと思う…
「靖国合祀取り消し訴訟」原告の「菅原龍憲」さんは1940年の辰年生まれだし。
『給食の歴史』を書いた「藤原辰史」さんは1976年の辰年生まれ…

三太-
ちょっと待った、「川端龍子」ってえ画家は、
1885年=明治18年の「酉年(とり)」生まれだぞ。

女将-
えっと……
はるか昔、同級生に「龍一」くんがいた…
同い年なんだから、辰年生まれのはずはない…
「干支」の字の名前で、「何年生まれだ」か一目瞭然、という説は撤回します。


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(681) 辰・りゅう・龍 

アルフレッド-
女将さん、年賀はがきのお年玉引き換えに郵便局へ行きました。

女将―
今年はお年玉がたくさん当たったんだけど、切手は干支の龍じゃなかった、「束ね熨斗」っていうんだって。

アルフレッド―
で、恒例、年賀状机上展覧会、やるんでしょう?(※1)

女将―
はい、やります。私の生きがいです。
でもねえ、昨年末に自分の出す年賀はがき用の「龍」を探したときにもなかなかピッタリするのが見つからなかった。何年も心がけてきたのに。
「辰」といい、「りゅう」といい、想像上の動物だから、どう造形してもかまわないわけだけど。
NHKテレビは『実在しない生きものですが』って特集組んでた、4千年前に絶滅した巨大ワニがモデルなんじゃないか、って言ってたみたい。(※2)
西洋のドラゴン、「竜」って訳すけど、騎士に殺戮されて宝と姫君を略奪されるっていう損な役回り、絶滅寸前。日本で言えば桃太郎に殺される鬼。
邪悪な怪獣というイメージで、醜怪に描かれる、年賀状にはふさわしくないって、たいていの人は思うんでしょうね。
東洋の「龍」は、雨や水を司り嵐を起こし山を動かす、天翔ける聖なる精、皇帝の象徴。

三太―
はじまり、はじまり―
「タツ年」なので、まずは、タツノオトシゴのパレード①
ついで、ゆるキャラな龍たち②。描き手は、80才超えて地域で活躍中のお姉さま、少し妹。
カラフルな東洋の龍の登場③。90才の描き手「み」さんの迫力。
嵐を起こして暴れ回って去ったあと、人間が恐る恐る形どった龍④。
HNさんが作りためた干支の羽子板、全員集合!⑤
ああ、デコちゃんのりゅう⑥がやっと来た。

女将―
西洋系。騎士を避けて山奥で暮らす草食系のりゅう一家の子ども。
長距離飛ぶにはスタミナが足りない。
で、空から落っこって…

アルフレッド-
エルマー君に助けてもらった、ボリス君ですね。(※3)
両親ときょうだい、あわせて16匹のりゅうの、色・模様がすべて違うんだそうです。

女将―
今年も、干支を超越して猫が来た。⑦
ボリスの窮状を伝えてエルマー君を救出に向かわせた立て役者「年取った野良猫」にそっくり。


おらあ三太だ!(681) 辰・りゅう・龍 2024年「年賀状机上展覧会」

①タツノオトシゴのパレード

②ゆるキャラ「龍」3態


③飛翔する東洋の龍




④龍頭
(左)湧水を守る(新潟県中魚沼町津南町、龍ケ窪) 
(右)龍虎の舞  (静岡県賀茂郡南伊豆町)     


⑤十二支羽子板







⑥エルマーのりゅう「ポリス」


⑦東京都多摩市の猫



※1 毎年、いただいた年賀状の机上展覧会を楽しんでいます。
 2018年 (477)アルフレッド・狛犬さん に(犬)
 2019年 (514)アルフレッド・狛犬さん み(イノシシ親子)
 2020年 (542)アルフレッド・ねずみは福の神
 2021年 (579)アルフレッド・卒業 (牛)
 2022年 (613)虎か猫か(猫)
 2023年 (646)干支引き継ぎ式(象)(写真は12年前のウサギ)
※2 NHKの「ダーウインが来た!「お正月特集 龍のナゾを大研究!」2024.1.14
実在しない生きものですが、この地球上には龍そっくりの生きものがたくさん!
※3 『エルマーのぼうけん』ルース・スタイルス・ガネット作、ルース・クリスタン・ガネット絵、渡辺茂男訳、福音館書店、1963
『エルマーとりゅう』1964、『エルマーと16ぴきのりゅう』1965。


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