?ノルウェーの森を想う

こまるは元気で無事ガーナのおっかちゃんの手にわたり、相変わらずノーテンキにしているとメールがきました。
ガーナでは一つの猫缶あけると大きいので、おんなじ味が三日も続く、それでもハンストしないで食べてるそうです。

こまる@ガーナ、猫缶 こまる@ガーナ2006.8、窓のやもりを見る
成田の検疫のとき、獣医さんが業者の人に「雑種と書いてあるけど、姿も性質もnorwegian forest catに似ている」と言ったそうです。
インターネットで調べたら、「利口で性質は温和、犬のように人になつく」、こまるにぴったりです。

おっかちゃんの任期2年が終わったらまた空を飛んで日本に帰ってくるのでしょう。

こまるの祖先がほんとうに「ノルウェーの森の猫」だったとしたら、地球の裏表を行ったり来たりする運命がDNAに組み込まれているのかもしれません。
(2006年7月28日 こまるのおっかちゃんのおふくろ記す)

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三太「こまる君からのもーれつ長い暑中見舞読んでる間に、秋なっちまった。日本の猫「辛口キャットのももちゃん」 も頑張ってる。」


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?ヨーロッパ経由ガーナへ発つ

 いつの間にか1年と5ヶ月が経ち、おっかちゃんはガーナに赴任することになって、こまるは後から送ってほしいとおふくろさんに頼んでいた。
おふくろさんは「貨物で送るなんて可哀そうでできない」といやがっていたけど、これもちゃんと専門の業者がいるんだね。
家まで迎えに来てくれて面倒な手続き一切をしてくれる。お金はもちろん「検疫」よりかかる。人間の男を連れて行くより高いらしい。
来た時のケージがもう小さすぎるからとおっかちゃんが新しいケージを買ってきた。
みたらKennelと書いてある。犬小屋だ。居心地はなかなかいい。
途中フランクフルトで1泊して合計48時間の旅だ。
「トイレはどうするんですか」とおふくろさんが電話できいている。 「轟音で参って何も食べないし、トイレもしません」という返事だったんだって。それをきいておふくろさんは益々落ち込んでいた。
 いよいよ出発の6月2日がきたけど、おいらはそんなことは知らない。
夜通しバルコニーで遊んでいたら、まだ朝の4時だというのにおふくろさんが起きだして台所の明かりがついたので、おいらは窓から飛び込んだ。おいらの大好きな「ささみとカニカマ入り」の缶詰をあけてくれたのでもうのどがゴロゴロ鳴った。
食べ終わるとおふくろさんが「お入り」というのでおとなしくケージにはいったら、扉を閉めるじゃないか。
なぜか不安で鳴き声が出た。といってももともとそんなに大きい声を出したことはないから知れたものだ。
やがて玄関で知らない声がして、おふくろさんの、「じゃよろしくお願いします」という声と一緒にケージが持ち上がって、玄関のドアが閉まる音。

大変だ!

おいらは思いっきり鳴きわめいた。今まで出したこともないような大声で。


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?日本で王子様になる

ももこおばさんはこもってる、おいらはノーテンキにうち中のし歩いている、どっちが居候だかわからなくなってきた。

ももこおばさんは、お気に入りの猫缶でもしばらく続くとパタッと食べるのをやめる。
おふくろさんも「ちゃんと食べないと他のものあげない」といってがんばるんだけど、2日目にはいると心配になっちゃって他の猫缶や生の鯵なんか買ってくるんだ。
「年寄りっ子は3文安いっていうこと」と自分で言ってる。

日本の「猫缶」はすごい。「かつおグルメ」でしょ、「金のまぐろ」でしょ、「なんとか懐石」に「猫公爵」、「わがまま猫」なんてのもある。

 おいら、来たころは誰かが何か食べてれば何でもねだったし、お皿にいれてくれるしりから鼻を突っ込んで食べようとした。
「居候、3杯目にはそっと出し」っていうんでしょ。
でも、おいらが何にもいわなくても、おふくろさんがちゃんと出してくれる。生肉を料理する時は必ず分けてくれる。おいしいものをとっかえひっかえ出されるとドライフードが嫌になっちゃう。
おいらだって、もっとおいしいものが出るとわかってきてからは、「ハンスト」をするようになった。ももこおばさんの食べ残しなんかにも見向きもしない。

「こまるが王子様みたいになっちゃった」っていわれた。
ボリヴィアは海が無いから魚は食べたことがなかったので、お刺身ははじめ苦手だったけど、だんだん好きになった。
和室の畳や襖での爪とぎも気に入った。
「こまるも日本の猫になったね」といわれた。



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?ももこおばさんの逆鱗に触れる

こまる@日本・和室2005こまる@日本・和室2005

おいらの写真見た三太のおかあ
「こまるじゃなくって、でかまるだぁ! シッポにカンドー!」

なんせおいらの尻尾は長くって、おいらがソファーから降りても尻尾はまだソファーの上。おふくろさんにでんと座られて悲鳴上げたこともある。

ももこおばさんのは、おふくろさんにいわせると「尻尾はももの泣き所。棍棒のように太短くて、笑っちゃう」代物。確かに怒りん坊のももこおばさんが、棍棒のような尻尾をぷりぷり振って怒ってる姿は笑える。
ももこおばさんの毛色は黒と茶のきじ模様。体重は3.5キロってとこかな。
おいらの毛色はグレーの濃淡のきじ模様で体重は4.5キロ、毛足が長いので余計大きく見えるらしい。いつかうちに来た人が走っていくおいらを見て「犬ですか?」ってきいてた。失礼だね。

ももこおばさんは、「ピンポ−ン」が鳴ったら即消えて、お客が帰るや否や現われる。石川家へきて、18年も世話になっていながらおやじさんには頑としてなつかない。
おいらのことなんか見るのもいや、というわけで奥の和室の押入れにこもっちゃったね。ごはんとトイレの時しか出て来ない。

 バルコニーからガラス戸越しにももこおばさんが見える。ちょうどおいらのほんとのママくらいの大きさだし、そばに行きたい。でもももこおばさんはとんできて顔中口にして「ファーッ」ていうんだ。それだけじゃない。ガラス戸越しに殴りかかってくる。
怖いよ〜。
おいらどうしていいかわからないから、とりあえずお腹出して「ごめんなさ〜い」するんだけど、許してくれないの。
こういう時猫もお腹出すんだよ。知らなかった?
ももこおばさんはもう烈火のように怒っておいらの動きに合わせてサッシに沿って駆け回ってるうちに、爪がカーテンに引っかかってからまっちゃった。
おふくろさんがはずしてやろうとしたら、なんと、その手にがぶっと咬みついたんだ。
おふくろさんは可哀そうに手がぱんぱんに腫れて、お医者に行かなくてはならなかったよ。
おいらが居間にいる時、ももこおばさんがトイレに行きたくなって仕切り戸をカリカリ引っかくとおいらはひっこまなくてはならない。
テーブルの下にもぐったり逃げ回る。
おっかちゃんが捕まえて「居候だから仕方ないよね」といいながら、おいらを部屋にほうりこむんだ。

このうちは南北に細長い間取りなので、居間をはさんで台所から南側においら、北側の和室にももこおばさんという棲み分け方式になった。
家族は家の中を移動するのにあっち閉めたりこっち閉めたり大変だったよ。

三太「こまる君のおたよりは、『おっかちゃんのおふくろさん』が入力してるんだ。バアチャンの孫自慢ってとこだね。
それ読んだ、子育て中のおっかちゃん(=ガーナでこまると暮らしている飼い主)が一言言いたくなる、ってえわけだ」



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?東京で居候する

三太「こまる君のおたよりは、『おっかちゃんのおふくろさん』が入力してるんだ。
バアチャンの孫自慢ってとこだね。それ読んだ、子育て中のおっかちゃん(=ガーナでこまると暮らしている飼い主)が一言言いたくなる、ってえわけだ」

Komaru's okkachanから―

ボリビアからの帰路が4日もかかったのは、デモのせいで飛行機が飛べなくなり、出発日が一日遅れ、更に乗り継ぎ地に着いたら乗り継ぎ便がオーバーブッキングで、もう1泊しなければならなかったためです。
また現行の新検疫制度では、予防接種その他の条件を満たせば12時間以内の係留で、空港を出ることが出来ます。
ペットホテルの商売、いまでも繁盛してるのかな?

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  東京って町は、おいらが育った所とは匂いが違う。このうちはマンションの5階にあって、住人はおふくろさんとおやじさん、「ももこおばさん」って大先輩もいる。おっかちゃんとおいらは居候だ。
ノーテンキと言われたおいらも最初の何日かはおっかちゃんの部屋のベッドの下にもぐりこんでいた。
この家には100平米近い広〜いルーフバルコニーがあるけど、初めは絶対出なかった。
何日目かの夜にそっと出てみた。草もぼうぼう生えてる、虫もいるし、おやじさんが飼ってる「金魚」ってものもいるし、プランターの泥掘ってトイレもできるし、やみつきになって、毎晩遊び呆けた。
「猫にとっては夜のほうが安心なんだね」とおっかちゃんのおふくろさんが大発見したように言ってたよ。
慣れてからは昼間もずっとバルコニーで遊んだ。昼間は鳥も来るからもっと面白い。
でもあののろまの鳩公でもすぐおいらが飛べないことがわかっちゃって、高いフェンスに止まって見下ろしてやんの。
癪にさわるったら。
で、ある朝プランターの樹を伝ってフェンスの上に登ってやったら、鳩公のやつら驚いたのなんのって。
それから鳩が来なくなったって、おふくろさんは大喜び。「こまるは役に立つねえ」とほめてくれた。
おやじさんともすぐ仲良しになった。おとなしく抱っこなんかされるもんだから「こまるはいい猫だ」とすこぶる点数を稼いだ。

 さあてバルコニーの話だったね。これについては大失敗もあるんだ。なんと5階から見事転落しちゃったの。
夜中のことだった。東側のバルコニーから南側のベランダに飛び移ろうとして足を踏み外しちゃったんだ。
おふくろさんは何べんもおりてきて、敷地の中を探した。
声が聞こえてたんだけど、おいら何が何だかわからなくて、返事もできなかった。おふくろさんは一睡もしなかったみたいだ。
明るくなってからやっと駐車場の車の下にいるおいらを見つけてくれたんだ。嬉しかったぜ。
うん、怪我は全然なし。猫は高い所から投げられてもちゃんと着地できるというのは本当だね。
でもこれもおいらが若いからで、友達の猫は洗面台から落ちて脚の骨折っちゃったって、おふくろさんの話。
 金魚釣りにはずいぶん時間をかけたんだけど全然釣れなかったね。
代わりに水草を釣り上げて台所に供えておいたら、おやじさんとおふくろさん、2人して大笑い。なんか楽しそうだったので、せっせと釣り上げてきたら、もういい、っていわれちゃった。



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?地球を半周して日本に入国する

三太のおかあ
「こまる君は、地球の向こう側からきたんだァ。」

ガーナの Komaru's Okkachan
「こまるも有名になったもんだね。」

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ボリヴィアから日本へきたんだけど、4日もかかる旅で大変だった。
空港に行くときからケージに入れられっぱなしで、成田に着いたら今度は「検疫」とかで2週間も空港にお泊り。
世話は誰がするの?って? 心配ご無用、ちゃんとそういう会社があるの。
昔は猫はフリ−パス、犬は足止め喰らって可哀想にというわけだったんだけど、猫エイズなんてものもある物騒な時代、2000年から猫にも検疫が必要になった。
もちろんお金がかかる。猫のお泊りは、ケ−ジだと餌代こみで1日2300円、個室だと3000円。2週間ともなればかなりの物いりだ。
おっかちゃんはけちってケージにした。
ところがケージだとまわりに他の猫たちが見えるでしょ。よその猫にあまり会ったことがないもんで、なんか落ち着かなくて、食事ものどを通らなくなっちゃった。

そしたら係りのお姉さんがおっかちゃんに電話してくれたらしく、3日目から個室に移された。その頃にはおいらも慣れてきて、係りのお姉さんとも仲良しになるし、
「こまるちゃん、て呼んだらお返事してくれました」なんて報告が行って、おっかちゃんも安心したらしい。
おいらはノーテンキだっていう評価が石川家で確立しちゃったんだけど、大体誰とでも仲良くなっちゃうな。

やっとお迎えが来ておっかちゃんの家についてやれやれと思ったがそうはいかない。
もう18年もこの家できじまる兄ちゃんの後釜をつとめている「ももこおばさん」という強敵が待っていた。
それからの聞くも涙、語るも涙の物語は次回のお楽しみ。



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?ボリヴィアでおっかちゃんと出会う

おいら、こまる。猫族。南米ボリヴィア生まれ、初めに覚えたのはスペイン語だ。
今日はアフリカのガーナから日本語で暑中お見舞い申し上げます。

正式には、「ガブリエル・こまる・石川」ってんだ。石川はおっかちゃんの苗字だけど、「こまる」にも「ガブリエル」にもいわれがある。
おいらのおっかちゃんは国連で途上国支援とかの仕事をしてるんだけど、ボリヴィアにいる時、オフィスにお掃除に来るお姉さんのうちでおいらが生まれた。
「もらってくれない?」ってお姉さんにいわれておいらを一目みたおっかちゃん、思わず「うん」といっちゃった。
おっかちゃんが子どもの頃家にいた「きじまる」という猫にそっくりだったんだって。それで「小さなきじまる」だから「こまる」になったってわけさ。
 ガブリエルの方はたいしたことじゃない。
いいにくいけどおいら、なんでもガブガブ噛みたくなっちゃうの。
ブラッシングなんかしてもらって気持ちよーくなるとおっかちゃんの手ガブっとやっちゃう。これ猫族の愛情表現じゃない?でもちょっとやり過ぎかなって自分でも思ってる。
それでガブリエルって名前ももらっちゃったの。


ボリヴィアには「猫缶」というものはなくて、ブラジル製ドライフードばかりもらってた。おんなじ味ばっかりだからおっかちゃんが何か食べてると必ず「何食ってんの?」とのぞきに行って味見させてもらった。
日本からおっかちゃんのおふくろさんが送ってくれた猫缶は周りの人たちに結構センセーションだった。
おっかちゃんが出張のときは、ママのうちに預けられたんだけど、とうもろこしなんか食べさせられて下痢した。蚤がうつるから、帰ると必ずお風呂に入れられるのが最低だった。蚤がみんな顔に上がってきて眼のふちをぞろぞろ歩くんだよ。さなだ虫をもらったこともある。日本から薬を送ってもらって飲まされたよ。
おっかちゃんは、休みの日には、おいらをケージに入れて公園や市場をぶらついた。いつも部屋に閉じ込められているおいらを、人に慣らすためだって。
売ってるんだと勘違いした人が「Cuanto es? (クゥアント エス=いくら?)」と聞いたこともある。ひやっとしたね。

もらわれて1年後におっかちゃんと一緒に日本へきた。
その旅のことはこの次に話すね。

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三太のおかあ、
「噛み付き屋が自分とおんなじ名前だなんて、大天使ガブリエルもびっくり!だろうね。」




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