

| (111) 三太漆黒の影 | |
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猫の「こまる」くん(※1)、日本に里帰りしてるんだ。 「こまる」くんの、おっかちゃんのおふくろさんからの手紙― むらき三太さま 三太くんがいるとカラスが庭に来ないなんてやっぱり犬はえらいんだね。 うちなんてモモがいてもカラスは平気だったし、でかいこまるがいてもそれは同じ。 それどころか、この間カラスが変な声出しているのでのぞいてみたら、こまるが藤の樹の下に小さくなっていて、カラスがフェンスから身を乗り出してこまるを脅していました。でもただ脅すだけじゃすまないという話をききました。動物園で、毛足の長い動物が、カラスに毛をむしられるという被害にあっているんだって。巣の材料にするらしいです。 こまるのふさふさした尻尾を狙われないようにという忠告を受けました。 カラスってすごいね。 * * * * * * * * こまるくんの尻尾の無事を祈りつつ、散歩に出た。 若葉の森への曲がり角で、遭遇! 漆黒の影! カラスじゃねい、黒ラブラドルのベイビーさんだ! 若衆犬一件(※2)以来、おかあが恋焦がれてた意中の犬だ。親分って呼び名にふさわしい、貫禄。 うさこオバサンはおらのこと、「イラストの顔とまったく同じ顔をした柴犬君が小さい身体で堂々、ベイビーに挨拶していました。ウーッってか。」 って書いてくれた(※3)。 昼間でよかった。暗いときだったら、全身真っ黒のベイビーさんと衝突してた。 うさこオバサンは、ベイビーさんに蹴つまずいたりしねんだろか? イギリスのラブラドル・レトリバー・ディドさんは真っ黒じゃねい、チョコレート色だ(※4)。それでも、暗いとこじゃ見えねい、忍者だ。 飼い主のチャップと奥さんが薄暗がりで何度かディドさんに蹴つまずいてから、幅広の黄色い首輪をプレゼントした。はっきりした目印にって。 チャップの仕事は諜報関係ってえから忍者みていなもんだ。でも、自分の犬が忍者だと困るんだと。 ヒトってほんとに勝手だ。 ※ 1.「こまる」はおふくろさんと先輩猫の「モモ」を“困ら”せて王子様になったあげく、ガーナのおっかちゃんの元に行きました。最近、里帰りして、おふくろさんと暮らしています。 「猫じゃらし(その2)16〜22「おいら、こまる」、こまるのシッポの写真は→ 19.おいら、こまる ?ももこおばさんの逆鱗に触れる http://www.geocities.jp/muraki_file/cat/1.html#060824 ※2(108) 三太若衆犬で会えなかった黒ラブのベイビー ※3 想風亭日記 2008.6.9 「緑と水のサイクル」 ※4 ディドは三太が尊敬している「もっぱら頭脳労働を任とする知識犬」です。 (20) 三太お仕事・その2 『犬のディドより人間の皆様へ』チャップマン・ピンチャー〔著〕 中村凪子訳、草思社、1994 一番上にもどる |
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| (110) 三太存在感 | |
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遅い! おかあ、まだ帰ってこねい、また、道草食ってんだろ。 ようやっと帰ってきた。 「ごめん、ごめん、遅くなって」 門の中に自転車ひきこんで、あわてておらと散歩に出た。 一回りして帰ってきた。自転車の荷かご見たおかあ、 「アッ! やられたッ!」 レジ袋が破れてる。穴から、ちぎれたパンが見える。 頭の上を見上げると、カラスが2羽、軒先に止まって見下ろしてた。 おらんちの辺りは、ゴミ袋はそれぞれ自分ちの前に置くことになってる。 お隣もそのお隣も、可燃ゴミ袋にゃネット掛けたり、籠かぶせたり、苦心している。それでも、カラスは袋を引っ張り出しちゃ道にぶちまけてる。 うちの可燃ゴミ袋は紙屑ばっかりだ。おかあが、魚の骨も野菜のきれっぱしもみんなおらのマンマに入れて、あとの生ゴミは庭の穴に埋めちちまうからだ。 カラスは賢い。うちの袋にゃ食いもん入ってねいって、チェックにも来ねい。 でも、自転車のレジ袋にゃ食いもん入ってる、って目エ付けてるんだ。 おらが居るときゃ、寄って来ねい。おら、居るだけで、猫もカラスも来ねい。 今日、おらが留守したのはたったの5分間だ。 カラスにゃ、充分すぎる時間だった。 元はといえば、おかあが悪い。 レジ袋を自転車の荷かごに置きっぱなしにした。 犯罪を誘発した責任は重い。 一番上にもどる |
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| (109) 三太お仕事中 | |
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もうじき昼だ。朝飯食ってから、もう6時間たつ。腹減ってきた。 「クウクウ」 催促してるのに、おかあ、雪柳の剪定に夢中だ。切った枝かたづけたり、水遣ったり、門扉もあけっぱなしだ。 おらがノー・リードだってことも忘れてる。 おら、門を出て歩き出した。 おかあ、あわてて、リードを持って追いかける。けど、おらと反対のほうへ行った。 出会ったオジサンに、「犬を見ませんでしたか?」 オジサン「うちで飼ってた犬も、お腹がすけば、帰ってきましたけどね」 ごもっとも。おかあも、空腹。腹ごしらえしてから探すことにしようと、うちへ戻った。 食べ終えたところへ、市役所から電話がかかってきた。 「お宅で犬を飼っていませんか? 犬を預かっているという電話がありましたので」 預かってくれている家へ急ぐ。雑種犬のジョンさんのうちだ。中学校の近く、週に一、二度通るところだ。 ジョンさんは家の中にいて、庭に置かれた食器にご飯が残っていた。おら、腹の虫に導かれて庭に入って行った。 ジョンさんの鳴き声で、そのうちのおかあさんがおらに気づいた。おらの胴輪の鑑札を見て、市役所に電話してくれたんだ。 おかあ、篤くお礼を言って、おらと一緒に帰宅。 「ああ、くたびれた。キミとつきあってると、緊張が絶えないよ」って、昼寝しちまった。v おら、おかあのボケを食い止めてる。立派に「アニマルセラピスト」(※)として働いてる。 待遇改善を要求する。 ※(3)三太のお仕事 一番上にもどる |
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| (108) 三太若衆犬 | |
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暗くなってから、「若葉の森」の坂道を登っていった。全身真っ黒な「ベイビー」さんも、この坂道を散歩してるんだ(※1)。 夜目の利かねいおかあを、おらが引っ張ってやってた。 「ファーッ!!」 立ちすくむ。 おらの鼻先5センチに小さな白いものが浮かんでる。 おかあ、目を凝らした、パンダ猫が、右手の懐剣(=爪)を構えてた。 おかあ、あわてて、おらを引き戻した。 おかあ、35年前のシーンを思い出した。「実録・安兵衛物語」の初夏の宵だ(※2)。 パンダ猫は、「さくら」にそっくりだった。 おら、あの時の「若衆犬」だ。 おかあ、崖から、「漆黒の影」が走りくだってくるんじゃねいか、って、闇をすかして見た。 誰〜れも来なかった。「ベイビー」さんもいなかった。 おかあ、おらが引っ掻かれなくってよかった、ってホッとした。 でも、ほんとは、「安兵衛」に会いたかったんだ。 ※ 1 「想風亭日記」2008.4.30 「うさこさん」が「クンクン親分こと黒ラブ」の「ベイビー」さんと歩く「若葉の森」や武者小路実篤公園について、4月30日、5月1日に書いています。 ※ 2 9.紙芝居「実録・安兵衛物語」その4 http://www.geocities.jp/muraki_file/cat/a.html おかあが35年前に目撃した事実を、構想32年、紙芝居に仕立てたお話です。
登場“人物”紹介
さくら=しがない借家暮らしの夫婦に育てられた娘猫。白黒のパンダ猫。 若衆犬=さくらをいたぶり、安兵衛に引っ掻かれた犬。 漆黒の影=安兵衛=石垣を走りくだって若衆犬を撃退、さくらを救ったノラ猫。全身真っ黒。 一番上にもどる |
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| (107) 三太若紫 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「三太のかあちゃん!」小学校の主事さんが呼んだ。 「フキ、食べる?」 おかあ、大喜びでうなずいた。 主事さん、校庭のフェンス際から抜いたフキ、どっさり持ってきてくれた。 真冬に、校長先生が「お好きなだけ、採ってください」って言ってくれたフキノトウ。 おかあ、フェンスの隙間から手伸ばしたけど、採れないまんま、春になって、でっかいフキに育ったんだ。 段ボール一箱分のフキ。おかあ、自分で料理できるひと摑みをとりのけると、あとは「どうぞお持ち下さい」って札つけて門の外に置いた。 主事さんが、物置の前に、抜いた花大根(※1)を山積みにした。紫色の花も咲きじまいだ、って。 おかあ、「それ、もらっていい?」 主事さん「ああ、いいよ。いっくらでも」 おかあ、ひとかかえもらってきた花大根の葉っぱをちぎり始めた。 包丁で刻んだ葉っぱを、鍋に入れながら、おらに言う、 「花大根、またの名は『紫金草』、『諸葛菜(しょかつさい)』とも言います。本日のメニューは、諸葛菜の菜メシです」 おらのマンマだと。 おかあ、読谷村役場の超巨大な紅いも(※2)で芋粥作れねいもんで、手近な素材で菜メシ作ることにしたんだ。地産地消。 「紅いもも紫、諸葛菜も紫、三太も紫」 なんて、へんな歌歌いながら、葉っぱ刻み続けてる。 どうでも、おらを紫色にしたいらしい。 おとうに「うちの『若紫』が、」なんてしゃべってる、おらのことだ。 おかあ、自分は紫式部のつもりか? ※1 花大根 (70) 三太紫金草 ※2 読谷紅いも (105) 三太ハンスト.. (106) 三太読谷村レポート
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